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プロ3×3プレイヤー
落合知也

3×3の未来と子どもたちの夢のため、これからも世界に挑み続ける。

「今は3×3の日本代表としてパリオリンピックに出場し、メダルをとることが夢。オリンピックの借りは、オリンピックでしか返せないですから」

東京オリンピックの悔しさを胸にリベンジを誓う

『Bucket List-Driven by Dreams』の3人目のゲスト・落合知也さんは、3×3(スリー・エックス・スリー)チーム「TOKYO DIME」および5人制チーム「越谷アルファーズ」に所属するプロバスケット選手だ。現役アスリートである彼の夢には、常に「世界」がある。

3×3は“街”から生まれたスポーツだ。ストリート発らしく、ときにはDJやMCが入り、さながらコートがライブ会場のようになる。そんなエンターテイメント性も備えた試合のなかで、選手たちは自ら戦術を組み立てプレイする。

彼は2014年から3×3の日本代表として第一線で活躍してきた。2018年のアジアカップでは銅メダルを獲得し、3×3が正式種目となった東京オリンピックでは日本代表の一人としてチームの躍進に貢献したが―――。

「東京オリンピック6位は非常に悔しい結果です。僕は3×3をもっとメジャーにしたいし、環境も変えていきたいとずっと思っています。でも、そのためには結果を出さなくてはいけない。だから、今の僕の夢は3×3の日本代表としてパリオリンピックに出場し、メダルをとることです。オリンピックの借りは、オリンピックでしか返せないですから」

3×3と出会ったことで再び情熱を取り戻す

9歳から始まった彼のバスケットボール人生は順風満帆だった。高校や大学は全国大会の常連校に進学し、いわゆるエリートコースを歩んできたが、大学卒業を前に前途洋々だった彼の心に虚無感が生まれる。

「どこか“やらされている感”を抱くようになってしまって。僕の人生、このままでいいのかな。バスケットボール以外の世界も見てみたいと思うようになったんです」

バスケットボールへの情熱が冷めてしまった彼は、競技生活から離れることを決めた。そして、大学卒業後は姉の影響もあってモデルの世界を目指す。ところが、バスケットボールでは利点だった体形がネックになってしまう。

「大きすぎたんです。骨格もしっかりしているから、痩せても服が小さくて入らない。モデルにとっては致命傷です。オーディションにはことごとく落ちるし、かなり挫折感を味わいました」

そんなとき親しい先輩から誘われたのが、ストリートバスケットボールだった。

「そこで初めて3×3に出会いました。これまで僕がやってきたバスケットボールとは全然違って、コートもボールも自分たちで用意するのですが、その作り上げていく空間がとても心地がよかったんです。プレイする人たちはキラキラしていたし、モチベーションもプロ以上に高かった。そのときのチームのリーダーには、人前に立つまでの準備をしっかりしろとよく言われたし、素晴らしいパフォーマンスを見せることがストリートボーラーの役目だと教わりました」

ちょうどそのころ、国際バスケットボール連盟が3×3の競技ルールを整備し、世界的な競技へと生まれ変わるタイミングでもあった。大きな転換期を迎えるなか、彼はバスケットボールへの情熱を再び取り戻した。

しかし、その後、日本代表になった彼の前に“世界”の壁が立ちはだかる。海外では、彼と同じくらいの大きな選手が信じられないようなクイックネスなプレイをするし、一方で自分の技術が通用しないことも。

「そこで世界に勝ちたいという、新たな目標が生まれました。でも、そのためには生活すべてをバスケットボールに注がなければ成長できない。だから、25歳のときにプロバスケットボールのトライアウトのテストを受けたんです」

基本的に5人制と3×3ではプレイの質も動きも異なる。ケガのリスクや試合日程が重なることを考えるとクラブチームとしては認めにくいものだが、晴れてテストに合格した彼は3×3とプロリーグを両立する数少ない選手となった。

「僕はこれが3×3で世界一になるための最善の方法だと思っています」

「世界やオリンピックにチャレンジする僕の姿を見て、子どもたちに夢を持ってもらいたい。将来、WORMAiDから世界に通用するバスケットボール選手を出すことが、僕の競技者とは違う夢の一つ」

現役として挑む姿を子どもたちに見せたい

独立から4年目を迎えた今、彼は次のステップを考えている。

昨年、彼はもう一つの夢に向けて新たなプロジェクトを始動させた。彼のコートネーム“WORM(ワーム)”を冠した『WORMAiD(ワームエイド)』は、彼が3×3で培った経験や想いを子どもたちの育成に役立てることを目的としたプロジェクトだ。子どもたちがバスケットボールに触れる機会をできるだけ多く設け、将来的には『WORMAiD』から世界に通用する日本代表選手を輩出することを目標にしている。こういった取り組みは、引退したアスリートに多くみられるが、彼のような現役選手が行うことは稀だ。

「世界やオリンピックにチャレンジする僕の姿を見て、子どもたちに夢を持ってもらいたい。だから、現役を続けながら教えることに意味があるんです。日本では3×3はまだまだマイナーなスポーツ。もっとプレイグランドを増やしていかなくちゃと思うし、子どものころから世界と戦う感覚を身につけることはすごく大事なことだと思います。海外の友人たちのなかには、すでに子どもたちに教えている選手もいるので、そういった環境とうまくリンクできたら、より素晴らしいバスケットボール選手が生まれるかもしれない。これは僕の競技者とは違う夢の一つです」

現役プレイヤーとして自身の夢に挑みながら、子どもたちの夢も一緒に追いかける。彼の諦めない姿は、3×3の魅力をより一層広げ、競技全体を盛り上げる一つの起爆剤となるはずだ。